オールドスクールヴィジュアル名盤解放地帯 #6「ROUAGE - ROUAGE」
クラシックな名盤をレビューしているオールドスクールヴィジュアル名盤解放地帯。今回はROUAGEがインディーズ期にリリースした1stアルバム「ROUAGE」をレビューする。
収録曲は、M01「シ・ク・マ・レ・タ・ト・キ」 M02「Function」 M03「めざめのうたげ」 M04「Cry for the Moon」M05「Mist of Tears」 M06「hide and seek」 M07「ark」 M08「Pa・ra・no・i・a」 M09「More Trance」 M10「Creation -審判-」 の全10曲。
作詞は全てヴォーカルのKAZUSHIによるもので、作曲はメンバー各々が担当している。3rdプレスまでリリースされた"名古屋系"を代表する聖典のひとつである。
ROUAGEは、KAZUSHI(Vocal)、RIKA(Guitar)、RAYZI(Guitar)、SHONO(Drums)の4人で1993年に愛知県で結成された。バンド名はフランス語で歯車の意味を持つ。1994年に名古屋界の重鎮であるex.Silver-RoseのKAIKI(Bass)が加わりインディーズ期のラインナップが揃う。シングル「SILK」のリリース、オムニバス「NEO ROCKS」への参加を経て、1994年7月に本作「ROUAGE」はリリースされた。(画像 左から1stプレス、2ndプレス、3rdプレス)
オープニングSEは"名古屋系"影の立役者であるMr.SASAKIによるM01「シ・ク・マ・レ・タ・ト・キ」。SASAKI氏は本作のプロデューサー兼エンジニアで、キーボディストとしても本作に参加しており、彼による効果音(メンバー曰く)が全編に施されている。
不気味な「死んでしまえばいいのに」という語りからRIKA作曲のM02「Function」になだれ込み本編の幕が上がる。この曲はRIKAの前バンドの曲を流用したものだという。ポジティブパンクをサディスティカルにしたような楽曲で妖しくもアグレッシブ。というか、あまりにもD'ERLANGER過ぎるフレーズが盛り込まれている。これはおそらくリスペクトを込めたオマージュなのであろう。
RAYZI作曲のM03「めざめのうたげ」 は「聖母は僕を釘づける」と歌うデカダンな詞世界と歌謡曲的なメロディー、ツタツタビートが炸裂。ラストに挿入されたガラスが割れる音もマニアにはたまらないものになっている。
M04「Cry for the Moon」は、KAZUSHIが詞とメロディーを持ち込み作られた楽曲で、王道の銀テープ発射系シンガロングナンバー。ヴィジュアル系の王道に対するカウンターからはじまった"名古屋系"であるが、こういった王道の要素を自己流に取り込んだスタイルがROUAGEの持ち味のひとつであると言える。
M05「Mist of Tears」 はKAIKI作曲のダークでメロディアスなミドルナンバー。オムニバス「NEO ROCKS」に収録されたものとは別バージョンとなっている。
M06「hide and seek」 はSHONO作曲の語りを多用した攻撃的なナンバーで、王道と名古屋系特有の"黒さ"が共存している。
M07「ark」はブリブリのベースが印象的なKAIKI作曲によるもの。曲名はファンクラブ名にもなっていて、本作のタイトル候補にもなっていたという。
RIKA作曲による M08「Pa・ra・no・i・a」 は黒夢「狂人」を彷彿とさせる名古屋系アンセム。ポジティブパンクとハードコアパンクを掛け合わせたようなスタイルは「これぞ名古屋系」という最高の仕上がりになっている。
SHONO作曲のM09「More Trance」 もM03、M06に通ずるような王道と名古屋系特有の"黒さ"が共存した楽曲。
ラストを飾るM10「Creation -審判-」はRAYZI作曲。ワルツ的な三拍子にどこまでもダークな呪いのような歌と語りが乗る。メンバーが「これからのROUAGEの序章」であると語っているように、後の作品に繋がっていくストーリー性を感じさせるものになっている。
──本作は、演奏スキルや音質の面において決してクオリティーが高いとは言えないが、それらのマイナス要素が逆にプラスに働き呪術的な暗黒世界に更に深みを与え、またそれらのマイナス要素を凌駕する初期衝動が閉じ込められている。ライトなヴィジュアル系ファンには難易度の高い作品となるが、一度ハマれば抜け出せない中毒性を孕んだ作品である。
当時、私はインディーズ期の黒夢に触れた時に"恐怖"を覚えた。当時のヴィジュアル系バンドの中で突出したあのダークな世界観に恐怖を感じてしまったのだ。私が幼かったというのもあるだろうし、音楽的な免疫がまだあまりなかった事もあるが、とにかく怖くなってしまったのだ。だが、次第にその"恐怖"は"快感 "へと変わっていき、同じような"恐怖"を与えてくれるバンドを探し始めるようになった。その時に出会ったのが、すでに大人気を博していた黒夢に続く存在として頭角を現していたROUAGEである。リリースされたばかりのシングル「SILK」を入手しライブにも足を運び、すぐに彼らのファンになった。
彼らはいわゆる"名古屋系"と呼ばれるスタイルの先駆者である。名古屋系と呼ばれるバンドには共通項はあるもののバンドそれぞれに独自のスタイルを形成している。ROUAGEは、名古屋系伝統のポジティブパンク/ゴス由来のシックかつダークなスタイルに、DEAD END/BUCK-TICK/D'ERLANGER/LUNA SEAなどを通過した王道ヴィジュアル系スタイルをミックスさせたサウンドが彼らのアイデンティティである。
血糊シャツを身に纏い小道具を使用したシアトリカルなステージを展開するなど名古屋系の中でも濃度の高い"黒さ"を見せていた彼らだが、音楽性の進化と共にその"黒さ"は徐々に失われていく。純度100%のピュア名古屋系スタイルを味わいたいのであれば、本作「ROUAGE」と翌1995年にリリースされた「理想郷」を併せてdigして欲しい。
TEXT:管理人
2020.04.27
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