オールドスクールヴィジュアル名盤解放地帯「黒夢 - 亡骸を…」

黒夢がインディーズ期に残した唯一のフルアルバム「亡骸を...」がリリースされたのは今から25年前、 1993年6月11日のこと。

V系創世期/黄金期には、それまでの歴史を塗り替え後続バンドのフォーマットを作り上げた聖典とも呼べる名盤がいくつか存在する。

本作は、その中でも最重要聖典の一つであり、V系史を語る上で非常に重要な位置を占める作品となっている。


『生前』

黒夢は、前身バンドGARNETの清春/人時/鋭葵とGERACEEの臣によって1991年に結成。

当時のV系シーンの主流に迎合する事を嫌った斬新奇抜な彼らのスタイルは絶大なインパクトを与え、黒夢は瞬く間にスターダムにのぼりつめる。

そんな彼らが「中絶」「生きていた中絶児」のヒット、オムニバス「EMERGENCY EXPRESS '93」への参加に続き、自主レーベルLa†Missから満を持してリリースしたのがこの「亡骸を...」である。


『脱皮』

DEAD END/ASYLUM/ZOA/G-Schmitt/Sadie Sads/ガスタンクなどをフェイバリットに挙げる清春と人時、44MAGNUM/D'ERLANGERなどをフェイバリットに挙げる臣。

一見、この相反するかのように見える互いの要素は化学反応を起こし、黒夢に揺るぎないオリジナリティーをもたらしている。

これまでに築いた、ダークかつハードなサウンドとグロテスクな世界観をもったバンドというイメージ。

本作では、そういったイメージから一歩踏み出し、新たな境地を見せている。

初期黒夢のハードな側面はやや影を潜め、清春が持つ天性の声質とメロディーセンスを活かした楽曲群が前面に出る作品となっているのだ。

また、初期のグロテスクな世界観も洗練されはじめ、「迷える百合達」で完成させるオリエンタルかつデカダンスな黒夢へ変貌していく過程を存分に堪能する事ができる。

言わば、その後のメジャーデビュー作「迷える百合達」へ繋がる作品と言えるだろう。


底辺<UNDER>に流れる精神は永久に変わらない

当時のライブオープニングSEである不気味なオルゴールの音色から、M1「UNDER...」で本作の幕が上がる。

これまでの流れを汲む強烈な2ビートが印象的だ。いや、ここではあえて2ビートではなく "ツタツタ"と呼ぶべきであろう。

ちなみに本作のドラムは、クレジットでは匿名となっているが、一時在籍するex.THE STAR CLUBのHIROが担当している。

そしてこの曲に込められた意味を、清春は当時のインタビューでこう語っている。

「時の流れとともに外見や表現方法が変わっても底辺<根底>に流れるものは変わらない、変わってしまってはおかしい、そういう事を歌っています。」

常にシーンの主流へ対するカウンターであり続け、スタイルを変えても反逆精神を持ち続けた黒夢。

「UNDER...」は、そういった黒夢のアティチュードを体現した曲となっているのだ。

現にインディーズ期の代表曲であり、ファンクラブ名を冠すほど重要なポジションにあった曲である。

M2「終幕の時」M4「讃美歌」M6「MISERY」M7「if」では、救いようのないほどに冷たく残酷な暗黒美旋律が鳴り響く。

後のインタビューで、本作リリース前に東芝EMIとの契約を済ませており、M6「MISERY」のようなミドルテンポで美しいメロディーをもつ曲を求められた事を明かしている。

M3「DANCE 2 GARNET」M5「十字架との戯れ」M8「JESUS 」で魅せる臣のサディスティカルなギターと人時のうねり踊るベースが、リスナーのボルテージを上げる。

そこに重なる清春の独自性が高いビブラートやヒステリックな唱法が、退廃美をより色濃くする。

そのボーカルだが、スケジュールの都合により2日間で録り終えたというから驚きだ。

BOOWY以降の日本語ロックスタンダードに寄り添ったアプローチも見受けられるが、決して安易なものになっていない。

それは、彼らが根底に持つ精神とバランス感覚のなせる技であろう。

「生きていた中絶児」から再録されたM9「親愛なるDEATHMASK」は"神の遺産"とも呼ぶべき曲だ。

耳を突き刺すような残虐でノイジーなサウンド、叩きつけられる狂気の世界、性急な"ツタツタ"ビートの上を這いずり回る発狂寸前のボーカル、清春の専売特許であり伝家の宝刀でもあるシャウトにビブラートをかけた"ビャイヤイヤイヤイ"など、細部に至るまで多くのフォロワーたちに伝統芸として継承され、様式のひとつを作り上げた歴史的名曲なのだ。

そして、DEAD END/Serafineを彷彿とさせる壮大なナンバー M10「亡骸を」で本作の幕が下りる。

この曲は、清春が亡くなった祖母へ追悼の意を表した楽曲となっており、清春ソロでは「PHANTOM LOVER」としてセルフカバーされている。


余談ではあるが、本作のキービジュアルにメンバーと共に写っているのは、GILLE' LOVESのボーカルLUCI'FER LUSCIOUS Violenoueである。彼らがリスペクトを寄せていたアーティストだ。

また、ブックレットには歌詞を補完するように散文詩が加えられている。こういった表現方法もフォロワーたちへ大きな影響を与えた。

「亡骸を...」は発売後、インディーズチャート2ヶ月連続首位を記録する大ヒットとなる。

それほど革新的でセンセーショナルな作品だったという事であろう。

もし、あなたがヴィジュアル系の深淵にまで触れたいと願うのならば、この作品を必ず手に取るべきである。

90年代から現代に至るまで、シーンの根底に脈々と流れる黒夢の遺伝子を感じ取る事が出来るはずだ。

TEXT:管理人

2018年4月18日


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