海外ファン200人が選んだ「90年代ヴィジュアル系バンド」ベスト10

振り返れば、ヴィジュアル系がグローバル化の動きを見せ始めてからもう20年近く経つ。海外でヴィジュアル系は「Visual-Kei」「Vkei」「VK」「視覺系」という呼称で親しまれ、世界中にファンが存在する。ピンとこない方に向けて簡単に説明させていただく。2000年代初頭、インターネットの普及に伴い国外でもジャパニーズカルチャーが身近なものになり、アニメ/ゲーム/原宿系ファッションなどと共に"ヴィジュアル系"も日本独自のカルチャーとして注目を集める事となる。2000年代中頃のネオヴィジュアル系ブーム、DIR EN GREYの海外進出、その後のレジェンドバンド達の再結成ブームの勢いも加わり、海外でヴィジュアル系フィーバーが巻き起こったのだ。「今、海外でヴィジュアル系バンドが大人気!!」といった報道を耳にした人も多いのではないだろうか。一時はマイナーバンドでも海外に行けば数百人を動員するような盛り上がりを見せていたが、現在その勢いは沈静化しつつある。しかしそれは、言い換えれば"本当にヴィジュアル系を好きな人だけが残った"という事でもある。筆者もヴィジュアル系考古学者の端くれとして、海外のヴィジュアル系ファンと交流をはかっているが、その熱量は日本人と比べてもひけをとらないものだと感じる。彼ら彼女らは、私たちの愛する90年代ヴィジュアル系バンドにも精通していてる。90年代ヴィジュアル系バンドは「90s Visual-Kei」、または年代を問わず古き良き様式美を持ったバンドを指し「Old School Visual-Kei」などと呼ばれている。そういった海外ファンの間で90年代ヴィジュアル系がどういった評価をされ、どのようなバンドが支持を受けているのか?──実態は謎に包まれたままである。その謎を解明すべく、SNSを通じて有志を募り「あなたが一番好きな90年代ヴィジュアル系バンドを教えて欲しい!出来ればどんなところに魅力を感じるのかも教えて紅~KURENAI~か?」と問いかけてみた。すると海外ヴィジュアルショッカーたちは「好きなバンドを一つだけに絞れというのかい?これは質問ではなく拷問だ!!」「この苦しみを呉れてやる」と言いながらも「OK…これはとても難しい質問だが答えよう」と約200人の熱き同志たちがこの問いに答えてくれた。本当にありがとう。そこで今回のコラムでは、海外ヴィジュアル系ファンに投げかけたこの質問の投票結果を集計し、多く支持を集めたバンドをランキング形式で紹介する。

先ず第10位にランクインしたのは、Versaillesやソロでも海外から支持を受けているKAMIJO率いるLAREINE。1999年にはメジャー進出を果たし、アニメ"ベルサイユのばら"の主題歌「薔薇は美しく散る」のカバーでも話題を呼んだ90年代を代表するヴィジュアル系バンドの一つ。MALICE MIZERからの流れを継承する耽美派スタイルは海外ファンの心を掴まないわけがない。

海外ファンからのコメント「私は彼らの音楽とヴィジュアルに恋していたんだ」「LAREINEは最高の美学をもったバンドだよ」

日本ではアリーナクラスのライヴを即完売させてしまうほどの人気を誇るL’Arc-en-Cielは第9位にランクイン。人気アニメ"るろうに剣心" "鋼の錬金術師"などの主題歌を手掛けており、国外からも熱い支持を集めている。2012年には、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで日本人初の単独公演を成功させる。海外ファンからは、有名なアニソンを歌うバンドとしてではなく、ロックバンドとして純粋に評価するコメントが寄せられた。

海外ファンからのコメント「L’Arc-en-Cielのサウンドは、量産型ロックバンドと比べ物にならないほど素晴らしい(特に初期)、Tetsuのベースラインはマジでグレイトさ」「特に93年から95年のL’Arc-en-Cielはクールだ、hydeのインディーでダークな雰囲気がたまらないね」「20年前のL’Arc-en-Cielとの出会いがきっかけでジャパニーズロックを聴き始めたんだ」

第8位は、1997年にメジャーデビューシングル「Melty Love」が80万枚を超える大ヒットとなり一斉を風靡したSHAZNA。今や世界共通の概念となった"Kawaii"をヴィジュアル系に持ち込んだ先駆け的バンドで、ヴォーカルIZAMのスタイルは海外の人が好むジャパンカルチャーと親和性が高い。これは納得のランクインだと言える。

海外ファンからのコメント「私は彼らのヴィジュアルが大好き、IZAMはとても美しい、SHAZNAを聴くとバイブスがぶち上がる」「IZAMはすごくKawaii」「キャッチーなポップソングとクールなギターの作品が気に入ってるよ、IZAMは当時のヴィジュアル系シーンで最もKawaiiボーカリストだね」「ドープなベースがいいね」

1999年にシングル「花咲く命ある限り」でメジャーデビューを果たし、メンバー全員10代という若さで日本武道館公演を成功させたRaphaelが第7位にランクイン。若さゆえの愚直さと等身大の魅力、そして計り知れぬポテンシャルを秘めたサウンドは瞬く間に当時の若者たちの心を掴んだ。夢より素敵な天使たちの歌声は、海を越えて今も世界中に響き渡っている。

海外ファンからのコメント「彼らの美学と歌声は本当に美しい」「Raphaelの歌はとてもセンチメンタルでグレイトだね」「彼らのメロディーはキャッチーで忘れられない、歌詞は別の宇宙に連れて行ってくれる、YUKIの歌声は感動的だ」「華月は素晴らしい才能をもっている、彼の音楽は私の心の奥深くにいつもある」

第6位にランクインしたのは、言わずと知れたレジェンドバンド黒夢。常にシーンのカウンターで在り続け、その変化の過程すべてに大量のフォロワーを抱えるカリスマバンドだが、いわゆる"クールジャパン"的な要素は極めて低い。黒夢のランクインは、海外ファンがジャパンカルチャーのフィルターを通さず、ロックの一ジャンルとしてヴィジュアル系を評価している証拠だと言える。

海外ファンからのコメント「清春のカリスマ性は無敵」「彼らは1つのジャンルにとどまることなく、ヴィジュアル系の多くのスタイルに影響を与た、いつもロックしている」「清春のヴォーカルと人時のベース=完璧なコンボ」「黒夢の多様性が好きだ、アルバムごとに音が違う、ゴス、ポップ、ハードロック、パンク」「変化する事を恐れなかったグレイトなバンドさ」

99年のメジャーデビュー以降、不動のメンバーでシーンをリードし続けるDir en greyは第5位に堂々のランクイン。ヴィジュアル系の王道を突き詰めた初期から変化を重ね、唯一無二のバンドへ進化したそのサウンドは、日本のみならず全世界で熱狂的な支持者を獲得している。

海外ファンからのコメント「GAUZEは名盤だ、夢中で聴いたぜ」「初期のDir en greyは私の基礎になっている」「メンバーチェンジがなくオリジナルメンバーなのがいいね」「進化の過程と多様なアプローチが好きだ」「5つの音が驚くほど素晴らしい」「蜜と唾と予感のMVを見て夢中になった、不整合さと誠実さが魅力」

1987年にメジャーデビューを果たし、メンバーチェンジすることなくシーンの第一線で活躍し続けるリビングレジェンドBUCK-TICKは第4位。孤高の存在でありながら後続バンドに多大な影響を及ぼし、ヴィジュアル系の始祖として崇められるBUCK-TICKの人気は、もちろん海外でも高かった。また、櫻井敦司の魅力は万国共通のようで"東洋一美しい男"として評価されているようだ。不確かなことが多い世の中だが、これだけは断言できる。BUCK-TICKのステージは死ぬまでに絶対に見ておくべきであると。

海外ファンからのコメント「彼らはまだ進化を続けている、そしてジャンルレス、Atsushiは地球上で最もホットな男」「アルバムごとに独自の特徴がある」「他のバンドには申し訳ないが彼らがナンバーワンだ」「絶えず成長し変化する彼らを愛している」「上品なエロティシズムが大好き、無限の進化をするバンド」「歌詞がいい」「実験的でドラマティック」「私の好きなアニメの主題歌を歌っていた、Atsushi様の声が好き」「ポップでゴシックでサイケデリック、両性具有な見た目も好き」「スタイルやルックスが変わっても幻想的だ」「あっちゃん愛してる」

ここからは遂にベスト3の発表。1992年にアルバム「IMAGE」でメジャーデビューを果たしたLUNA SEAが第3位にランクイン。ヴィジュアル系の様式美を完成させ多くのフォロワーを生み、日本ロック史も塗り替えた伝説のバンド。LUNA SEAがベスト3に選出されたのは当然の結果だと言える。

海外ファンからのコメント「一貫したサウンド/スタイルがクールだ」「90年代の彼らは本当に素晴らしい、暗黒のエネルギーを持っていた」「ライブを体験できたのは私の大切な思い出の1つ、日本語が分からなくても感動した」「彼らの音楽は私の人生を変えた」「RYUICHIの声が素晴らしい」「最初の5枚のアルバムが素晴らしい」「初期の頃はThe Cureを彷彿とさせる」「彼らの歌の意味を理解するために日本語を学んでいる」「何年にもわたって独自なスタイルを完成させた進化が大好きなんだ」「彼らはとてもクールだ、特に94年から96年がお気に入りさ」

続いて第2位。そう、このバンドなくしてヴィジュアル系は語れない。ヴィジュアル系シーンを創造し、90年代ヴィジュアル系ムーブメントを牽引したキング・オブ・キングス X JAPAN。彼らの前に道はない、彼らの後ろに道はできる。

海外ファンからのコメント「ART OF LIFEは他に類を見ないグレイトな作品」「彼らの音楽の多様性、ファンとの絆が私を感動させる」「彼らに似てるバンドを聴いたことがない」「HIDEのカリスマ性が凄すぎる」「日本語はわからないが、すぐに気に入った」「彼らの歌には人を奮い立たせる何かがある、バラードが最高だ」「言葉では説明できない何かがある、こんなに美しいメロディーはない」「彼らの歴史とスタイル…言葉ではうまく伝えられない」

栄えある第1位に輝いたのは、中世ヨーロッパを彷彿させる斬新なヴィジュアルとサウンド、徹底的に作り込まれた世界観と舞台のようなステージで究極のヴィジュアル系と称されたMALICE MIZER。90年代後期のポストヴィジュアル系ムーブメントをリードし、シーンの様相を一変させたトップレジェンド。ジャパンカルチャーとの親和性も高く、海外ファンがヴィジュアル系バンドに求める要素を全て持っているバンドと言っても過言ではないだろう。これを証明するように、圧倒的票数を獲得した。

海外ファンからのコメント「音楽だけでなく、両性具有のヴィジュアルは、海外の若者にとっても刺激的なものだった」「MALICE MIZERと言わざるを得ない、ゴシックファッションを着るきっかけになった」「Gackt期は最高の化学反応を起こしていた」「私が今でも聴き続けている唯一の日本人バンド」「Klahaが好き」「出会ってから20年経った今でも、彼らの作品から新たな発見がある」「歴史上最も独自なスタイルを持ったバンド」「ヴィジュアル系を知るきっかけになったバンド」「Manaは私に大きな影響を与えた」「TETSU期が好き」

僅差でベスト10入りを逃したのはLa’cryma ChristiMerry Go Roundだ。1997年にメジャー進出を果たしたLa’cryma Christiは、第1位に輝いたMALICE MIZERと共に90年代後期ポストヴィジュアル系ムーブメントを代表するバンド。高い演奏技術と良質な楽曲、際立ったメンバーの個性が魅力で、日本でも高い人気を誇っている。海外ファンからは「ロバートプラントのいないレッドツェッペリンのようだ」「彼らのプログレV系ロックサウンドは最高さ」といった声が寄せられた。80年代アンダーグラウンドシーンのアブノーマルでアヴァンギャルドな空気を一点に凝縮させたような、オリジナル度/変態度の高いゴシックロックがコアなヴィジュアル系ファンから絶大な支持を集めるMerry Go Roundもラクリマと同票を集めた。第5位にランクインしたDir en greyなどにも強い影響を与えた絶対的カリスマMerry Go Roundの評価は海外でも高いようだ

次いで票を集めたのは、90年代後半から00年代前半にかけて"ヴィジュアル系2大カリスマバンド"としてDir en greyと双璧をなしていたPIERROT、メジャー進出も果たした名古屋系ヒーローLaputa、サブカル文系女子から熱い支持を集め現在も活動を続けているPlastic Tree、アナーキストレコード出身の妃阿甦(THE PIASS)

また、コテ系バンドレーベル"KEY PARTY"所属のAliene Ma'riageEliphas Levi、スカム&カルト系の帝王として日本でも熱烈な信者を持つDeshabillzMadeth gray'llなどにも票が集まった。

"海外ファン200人が選んだ「90年代ヴィジュアル系バンド」ベスト10" いかがだっただろうか?日本ではアンダーグラウンドなバンドが票を獲得し、逆に日本ではどメジャーなバンドがランクインを逃すなど、海外ファンならではのランキングとなったのではないだろうか。個人的に興味深かったのは、投票されたバンドのほとんどが直接的/間接的にゴシックからの影響を受けていて、そういった要素を前面に打ち出しているバンドだという事。これはゴシックの本場である欧米ならではの現象だと言える。


今回の記事執筆にあたり、協力してくれた海外ヴィジュアルショッカーの皆様にこの場を借りてお礼を申し上げたい。

1/3も伝わらないかもしれないけど、心からキミに伝えたい──。

Thank you overseas VK fans, may the VISUAL SHOCK be with you.


TEXT:管理人

2020.08.09


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