オールドスクールヴィジュアル名盤解放地帯 #5「Gilles de Rais - 殺意」

クラシックな名盤をレビューしているオールドスクールヴィジュアル名盤解放地帯。今回はGilles de Raisが1992年に名門"エクスタシーレコード"からリリースした2ndアルバム「殺意」をレビューする。

収録曲は、M01「SUICIDE」 M02「MOONLIGHT LOVERS」 M03「UP TO DATE」 M04「殺意」M05「BRAIN FOR DELIRIUM」 M06「K3 NOISE」 M07「SLOW LINE」 M08「CYBER PUNK」 M09「崩れ落ちる前に…」 M10「巴里祭」 M11「FOLLOW ME」 M12「#19」 M13「PEOPLE OR PEOPLE」の全13曲。

1992年度オリコン年間インディーズアルバムチャート1位に輝き、2万枚以上のセールスを記録。ヴィジュアル系史における金字塔的作品として今もなお高い評価を受け続けている名作中の名作である。

Gilles de Raisは、CRY-MAX、CHRISTIAN DOLLのメンバーを中心に1989年に大阪で結成されたバンドで、JOE (Vocal)、JACK (Guitar)、DEE (Bass)、SINN (Drums)の4人組。

HR/HM、プログレ、ポジティブパンク/ゴス、ハードコア/パンクなどの要素をクロスオーバーさせた独自の"イマジネーションパンク"が人気を博した。

インディーズシーンで快進撃を続け、1993年にポニーキャニオンからメジャーデビュー。「Gilles de Rais」「JAPAN」「Crack A Boy」といった素晴らしい作品を残したが、1995年に惜しまれつつ解散した。

1990年にMOON DROPSよりリリースした1st「DAMNED PICTURES」ではプログレ、ポジティブパンク/ゴス、民族音楽などの要素を取り入れたサウンドで、ZOAやASYLUMといったトランス系バンドを彷彿とさせるスタイルをみせていたGilles de Raisだが、そのサウンドは「殺意」で確立するスタイルへと徐々に変貌していく。

では、その変貌の契機となったものは何だったのか? それはLUNA SEAをはじめとしたエクスタシー系のバンドとの出会いだったとメンバーは語っている。

「関東のバンドは関西のバンドには無いものを持っていて刺激を受けた」「特にLUNA SEAはライバルであり戦友とも呼べる存在だった」という。

そういった関東勢のバンドに触発されたGilles de Raisは、YOSHIKIにエクスタシーレコードへの移籍を打診。晴れてエクスタシーレコードへの加入が決定する。

ちなみにYOSHIKI曰く「ヴォーカルのJOEとは殴り合いのケンカで友情を築いた」との事。

本作「殺意」のアイデンティティとなるのは、やはりポジティブパンク/ゴス、ハードコア/パンクを基礎に攻撃性とメロディーを追求した妖しくも暴力的なサウンドであろう。

しかし、こういったスタイルは先にLUNA SEAが確立し当時の黒服系バンドの王道的なスタイルとなっていて、Gilles de Raisの音楽性の変化に対してもLUNA SEAの成功例に寄せたものだという声もあった。

確かにメンバーも公言しているとおり同期のライバルバンドからの影響もあったであろうが、それはGilles de Raisの表面上を捉えただけの短絡的な評価であると言わざるを得ない。

ルーツとなるバンドなどに共通点はあったものの、Gilles de Raisは別ルートで独自のメタルコア的サウンド"イマジネーションパンク"へ到達している。本作には彼らを唯一無二のロックバンドたらしめるオリジナリティーがいくつも詰め込まれている。

M01「SUICIDE」  M03「UP TO DATE」 M04「殺意」M06「K3 NOISE」 M08「CYBER PUNK」   M11「FOLLOW ME」 M12「#19」のような、DEAD END、スターリン、アレルギー等からの影響を消化した妖しくもパンキッシュでキャッチーなファストナンバーは彼らにしか表現出来ないものであろう。

これらの楽曲に加え、タイトルにもなっている"殺意"という文字をあしらったマスクや腕章、血糊包帯を身にまとったヴィジュアルは、80年代アンダーグラウンドシーンのパンクバンドのような危険な空気を醸し出していた。

また、BOØWYやARBをフェイバリットに挙げている事からもわかるようにめんたいロックやビート系バンドのような男臭さや不良性も併せ持っていて、男性ファンから熱い支持があるのも頷ける。

楽曲の完成度は勿論の事であるがメンバーのプレイも秀逸で、本作のメインソングライターであるJOEのパンキッシュで男らしいヴォーカルスタイルをはじめ、リッチー・ブラックモアやランディ・ローズを師と仰ぐJACKのテクニカルに弾き倒すギターもGilles de Raisのオリジナリティーを形成する重要な要素である。歌うように動き回るDEEのベースと、手数は多いが決してヴォーカルを殺さないSINNのドラムも素晴らしいの一言に尽きる。

こうした安定感抜群のプレイスキルから繰り出される、ヴィジュアル系本来の攻撃性と危うさに特化したサウンドはシーン随一のものであった。この「殺意」という作品は、世界観を助長するジャケットアートや収録曲の流れも含め、完璧と呼べる数少ない本物の名作のひとつである。

80年代ヴィジュアル系創成期のHR/HMシーンは知識やテクニックを誇示する時代だった。それに対してYOSHIKIは「ロックは受験勉強か?」と中指を立てた。本来ロックとはそういったスノビズムとは対極のものであったはずで、ヴィジュアル系の本質もまた同じであると思っている。

ゆえに「この作品を理解できない人はわかってない」「◯◯を知らないのに◯◯を語るな」といった類の言葉がいかにくだらない事であるか重々承知しているつもりだ。

だが、これらを踏まえた上で本作の重要性と魅力を伝える為にあえて言わせてもらいたい。「殺意」という作品はヴィジュアル系史における最重要作品のひとつであり、Gilles de Raisはその歴史を語る上で決して欠かす事のできない存在である。 

──これを聴かずしてヴィジュアル系は語れない。

TEXT:管理人

2020.04.04


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