オールドスクールヴィジュアル名盤解放地帯 #4「hide - HIDE YOUR FACE」

クラシックな名盤をレビューしているオールドスクールヴィジュアル名盤解放地帯。今回はhideが1994年にリリースした1stソロアルバム「HIDE YOUR FACE」をレビューする。収録曲は、01. PSYCHOMMUNITY 02. DICE 03. SCANNER 04. EYES LOVE YOU[T.T.VERSION] 05. D.O.D.(DRINK OR DIE) 06. CRIME OF BREEN st. 07. DOUBT[REMIX VERSION] 08. A STORY 09. FROZEN BUG '93[DIGGERS VERSION] 10. T.T.GROOVE 11. BLUE SKY COMPLEX 12. OBLAAT[REMIX VERSION] 13. TELL ME 14. HONEY BLADE 15. 50% & 50%[CRYSTAL LAKE VERSION] 16. PSYCHOMMUNITY EXIT。ジャケットアートには、映画『エイリアン』のクリーチャーデザイナーとして世界的に有名なH・R・ギーガーの作品が使用されている。レコーディングにはhideがファンだったドラマーのテリー・ボジオ、T.M.スティーヴンスなどが参加している。

本作のオープニングを飾るのは、壮大なインストナンバーM01「PSYCHOMMUNITY」。hideがディズニー音楽のオーケストラアレンジ、マーチングバンドなどにインスパイアされた曲。タイトルはPSYCHOとCOMMUNITYを合わせた造語で、精神世界を共有する集合体を意味する。

M02は先行シングルとしても発売された「DICE」。hide流のひねくれたポジティブを表現した歌詞に仕上げたという。音楽番組では、アングラ演劇を取り入れた衝撃のパフォーマンスを行った。

ミニストリーを彷彿とさせるM03「SCANNER」は、ある人物にヘイトを叩きつけた歌詞をhideのパンキッシュなヴォーカルでまくし立てる爆走ナンバー。後にシングルカットされるTELL MEのカップリングでは、RYUICHI (LUNA SEA)と愛のデュエット?を披露している。

M04「EYES LOVE YOU (T.T. VERSION)」は、ソロデビュー曲をテリー・ボジオ、T.M.スティーヴンスのコンビでリテイクしたバージョンとなっている。

メタリカがトイ・ドールズの楽曲を演奏するイメージで作られたというM05「D.O.D.(DRINK OR DIE)」。この曲に限らずロックンロール、パンク、メタル、グランジ、インダストリアルをhide独自のポップセンスでクロスオーバーさせているのが本作のアイデンティティである。アルコールを愛したhide自身の事を思わせる歌詞だが、hide曰く「俺は焼酎もどぶろくもテキーラも飲まん(笑)」とのことで一般的な酒飲みの歌詞だそう。

インターリュード的なインストM06「CRIME OF BREEN st.」を挟み、ソロデビュー曲のカップリングに収録されていたhideの代表曲のひとつM07「DOUBT[REMIX VERSION]」。バットホール・サーファーズからの影響を感じるインダストリアルテイストの強い楽曲で、自身もお気に入りの曲。歌詞はある出来事への怒りを表したもの。

アコギが印象的なナンバーM08「A STORY」は、世界崩壊後に核シェルターから出てきた人間が見る情景をモチーフにして作られた。

M09「FROZEN BUG '93[DIGGERS VERSION]」は、LUNA SEAのJとINORAN、hideによるユニットMxAxSxSで発表した楽曲のリメイク。原曲はVA「DANCE 2 NOISE 004」に収録されている。

M06と同じく雰囲気を変える為に収録したインストM10「T.T.GROOVE」に続き、ホーンを導入したファンクナンバーM11「BLUE SKY COMPLEX」。

M12「OBLAAT[REMIX VERSION]」では、hideが提唱していた"コワイイ"世界観を遊び心全開で炸裂させる。セックス・ピストルズのジョニー・ロットンを思わせるhideのヴォーカルも秀逸だ。

ポップな楽曲を作ろうとアコギ一本で作ったというM13「TELL ME」。ストレートなポップナンバーだが、レゲエ/ダブ的なパートがあったりスクラッチ音が入っていたりとただのポップソングで終わらせないhideのセンスにただ脱帽するしかない。

M14「HONEY BLADE」は、近親相姦をテーマにした楽曲。ライブでのシアトリカルなパフォーマンスは必見。

実はシングルバージョンではなくこちらがオリジナルバージョンだというM15「50% & 50%[CRYSTAL LAKE VERSION]」。ソロデビューシングルではお得意のポップでパンキッシュなロックンロールだったが、こちらのバージョンはカントリー調ではじまる。hideのルーツのひとつであるレッド・ツェッペリンを感じさせるアレンジ。

本作ラストを締めくくるのは、M16「PSYCHOMMUNITY EXIT」。PSYCHOMMUNITYでhideの人格に入ってきたリスナーに「アルバムがいつまでも終わらないでほしい」と感じてもらえたらという思いで作られた曲。またアナログレコードの外周で音源が終わらずループする仕様"ロックド・グルーヴ"をイメージしたという。これはアナログの良い部分を失くしハイテク化していく時代に対するhideからのアンチテーゼだという。故きを温ねて新しきを知る、創造と破壊、ルーツに敬意を忘れず新しい物を生み出したhideを象徴するようなフィナーレである。 

当時、私はX JAPANの大ファンだった。その中でもギターのHIDEが大好きだった。ソロアルバムの発売告知がされてから近所のCDショップに予約しに行った。特典でhideのロゴをあしらった缶バッジをもらえるし、立体パッケージになるという初回限定盤をどうしても手に入れたかったからだ。それから発売まで楽しみで仕方なかった。CDを手にする喜びを思えばつまらなかった学校も苦にならなかった。そしてついに発売日、学校から帰宅後、自転車を走らせCDショップへ向かった。私の住んでいた街は坂道が多いところだったが、不思議とペダルは軽かった。自室にもどり、興奮を抑えながらクリスマスプレゼントに買ってもらったCDコンポに盤をセットし、ブックレットを手に取り再生ボタンを押す。人気絶頂の最中にあったX JAPAN、その中でも花形だったギタリストHIDEのソロアルバムとあって期待値は高かった。だが「HIDE YOUR FACE」という作品は、その期待値をはるかに凌ぐ衝撃を与えてくれた。ロック本来の危うさと妖しく猥雑な香りを放ちながらも、どこかキュートでユーモラス。ロックの持つ暴力性やデカダンスを保ちながら、hideの人間的な温もりも感じさせる。オルタナティブでエクストリームな本当の意味でのミクスチャーロック。そこには幼稚なマイナー志向などなく、万人が理解し得る普遍性を持つ。

──「HIDE YOUR FACE」のトータルテーマは初期衝動。このアルバムはhideからロックに出会った頃の冴えなかった自分(少年・松本秀人)へ向けた時空を超えた手紙でもあるという。ロックから初期衝動を与えられガラッと変わってしまっという松本少年。その松本少年とはhide自身の事だけではなく、「HIDE YOUR FACE」を手にしロックに目覚めた私たちの事でもある。そう、このアルバムはすべてのロック少年・少女へ向けたhideからの時空を超えた手紙なのだ。 

TEXT:管理人

2020年01月24日


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