新時代の恐るべき子供たち、期待のニューバンド「蘭図」

30年続いた平成という時代が終わり、令和という新しい時代が始まった。

また、10年代も残りわずかとなり、20年代を迎えようとしている。

そして、私たちが愛するヴィジュアル系シーンも、新たなフェーズに移行する段階に入ったのではないだろうか。

今回のコラムは、2019年1月から始動した「蘭図」というバンドを紹介する。


「蘭図」とは?

2016年7月に解散したAvelCainのヴォーカリストである業-karma-を中心に結成したバンドである。

2019年5月にドラムの和樹-kazuki-が脱退し、現在のメンバーはヴォーカルの業-karma-、ギターの拓也-takuya-、ベースの誠-makoto-。

2019年1月6日高田馬場AREAで行われたファーストワンマンで始動開始したばかりの新バンドなのである。

現在入手可能な音源は、2019年1月にリリースされた1stミニアルバム「Inferiority Complex & Narcissism」、2019年5月にリリースされた1stシングル「Leda Atomica」。


では、彼らの作品「Inferiority Complex & Narcissism」「Leda Atomica」、そして彼らが掲げる「超視覚的主義-シュルビジュアリスム-」をキーにしてに魅力を紐解いていきたい。


"ネオ黒服系"スタイル

まずは、彼らのアーティスト写真を見て欲しい。

ヴォーカル 業-karma-の、カリスマ"清春"を彷彿とさせるヴィジュアルに驚いた方も多いのではないだろうか。

アーティスト写真から漂うあの時代の空気と、黒夢が残した伝説の名盤「亡骸を…」「迷える百合達」を思い起こす高い美意識。

近年いくつか存在した90年代後半に隆盛を極めたコテ系と呼ばれるスタイルへの回帰とはまた違う、90年代前半のヴィジュアル系バンドのようなデカダンな佇まい。

あの時代の黒服系スタイルを現代の感覚でスタイリングした彼らのヴィジュアルは、"ネオ黒服系"といったところか。

ネオ meets オールドスクール、それが彼らのヴィジュアルから抱いたファーストインプレッション。

そのぼんやりとした感覚は、彼らの音に触れて確信に変わった。

1stミニアルバム「Inferiority Complex & Narcissism」

劣等感とナルシズム。

胡蝶蘭に蛾が群がる退廃的なジャケットアートと、ヴィジュアル系ロックの初期衝動を体現したかのようなタイトルに美学を感じる。

オープニングSEとなるM1「Inferiority Complex」は、黒夢『迷える百合達』に収録されている「開化の響」のオマージュのような楽曲となっている。

そのヴィジュアルなどが物語っているように、業-karma-は"名古屋系"からの影響を公言している。

そしてリードトラックとなるM2「Phalaenopsis 」 。ノスタルジーが詰め込まれた音の数々に、もういきなりノックアウトされてしまった。黒夢「for dear」ROUAGE「SILK」あたりをフラッシュバックさせる、あの時代のシングル曲のようなキラーチューン。

M3「Deep Inside」も伝統のツタツタビートと、空間系エフェクト、清春シャウトなどが盛り込まれたオールドスクールナンバー。

M4「Lolita」では、今も語り継がれる伝説の名古屋系バンド"Merry Go Round"のオマージュを感じさせる。フェティシズムを感じる世界観、自主規制音、語りなどリスペクトが満載だ。

M5「Mother」、M6「神経衰弱」と退廃的なミディアムナンバーが続く。

実質ラストナンバーとなるM7「炎舞」は、後続ヴィジュアル系バンドの聖典となった黒夢「親愛なるDEATHMASK」をモダンにRebirthさせたようなハードナンバー。「伝統を引き継ぐ事に重要なのは形ではなくスピリットだ」と歌う彼らに熱いヴィジュアル系魂を見た。

そして、黒夢「開化の響 [reprise]」にあたるであろうM8「Narcissism」で本作の幕が下りる。

余談だが、HANOI ROCKSのマイケル・モンローから影響うけたであろう清春の「Fuuuu!!!!!!!!!!」というシャウトや、80年代のパンクバンドからインスパイアされたであろうメリゴのフレーズをリフレインしていくスタイルなどが、巡り巡って現代のヴィジュアル系バンドに受け継がれていく様は感慨深いものがある。音楽オタク冥利に尽きるなと感じる瞬間である。


1stシングル「Leda Atomica」

サルバドール・ダリ作品「レダ・アトミカ」から引用したのだろうか。

1stミニアルバム「Inferiority Complex & Narcissism」に続くシングルとなる。

教会音楽を思わせる荘厳なSE、M1「満ちながらにして空の聖杯」で本作の幕が上がる。

リードトラックとなるM2「Leda Atomica」は、前作に収録されている「Phalaenopsis 」に続き90年代前半のヴィジュアル系バンドのシングル曲を思わせる。しかし本当に曲が良い。アレンジや音作りも素晴らしい。

L'Arc-en-Cielの名曲「The Rain Leaves A Scar」とメリゴのスタイルをクロスオーバーさせたような印象を受けたM3「マリーにさよなら」。前作にも言えるのだが、蘭図からheavenly期ラルクのエッセンスがほのかに感じられるのは私だけだろうか。

ラストはデカダンバラードM4「ドグラ・マグラ」。

今作で夢野久作の「ドグラ・マグラ」を引用していたり、AvelCain時代に松井冬子の作品をSNSアカウントでヘッダーに使用していたりする事から、業-karma-の世界観はアングラアートなどに強い影響を受けているのではないかと思う。

業-karma-のヴォーカルは、良い意味で弱々しい。だが、逆にそれがあの時代をフラッシュバックさせる。

妖花の女璃衣、DeshabillzのSHUN、Madeth gray'llの翡翠などに通じる中毒性がある。

拓也-takuya-のギターからは、レジェンドギタリスト"SUGIZO"の遺伝子を強く感じる。フレーズや音作りも秀逸で、しっかりと巧い。

誠-makoto-のベースの、押すところは押して引くところは引いたプレイも心地良い。

これまでのレビューから、90年代回帰の焼き直しだと思う人もいるかもしれない。

だが、蘭図の魅力、その特筆すべき点は、三人が紡ぎ出す世界がただのノスタルジーで終わらず"新しい何か"を確実に感じさせる事なのだ。


Death & Rebirth

以前にhideの記事で、hideは温故知新の人だと書いた事がある。

歴史をかえりみて、その根底に流れる真理を得る。そして、それを自分なりに発展させていくこと。 それが、温故知新だ。

ルーツにリスペクトし、それを新しい自分たちのスタイルに昇華する。

X JAPAN、LUNA SEA、黒夢など多くのレジェンド達がそれを体現し、時代を作り上げてきた。

そういったヴィジュアル系のアイデンティティーともいえるオルタナ精神を、彼らの楽曲や活動スタンスからも感じ取る事が出来る。

また、インタビューなどでも業-karma-はその旨の発言をしている。


「ここでいう自分の作品とは今までを踏まえた上で今自分が何を表現するかです。例えば何にも影響を受けていない作品なんて存在しないので。重要なのはそこに対する想い、精神性だと思います。」
「僕の中ではそれは"メイクしてる、してない"じゃなくてメイクしてなくてもビジュアル系の格好良さを持っている人がいて、そういう精神的なものに惹かれたのがビジュアル系の中でも名古屋系だったんです。だから僕は僕なりにビジュアル系というものを【蘭図】というバンドで表現したいと思っています。」

◼︎AvelCain解散から約二年。 蘭図として始動した業-karma-単独インタビュー。|FIVESTARS MAGAZINE[ファイブスターマガジン]から引用◼︎


過去を踏襲する事は決して悪い事ではない、引き継ぐべき様式美もあるだろう。

業-karma-が言うように大事なのはそこに精神性が伴うかではないだろうか?


彼らが提唱する「超視覚的主義」 -シュルビジュアリスム-とは何か?

蘭図が提唱する「超視覚的主義」 -シュルビジュアリスム-とは一体何なのか?

SNSでの彼らの発言から、これは現在のヴィジュアル系シーンのトレンドに対するアンチテーゼではないかと推測する。

それは、X JAPANが掲げた「PSYCHEDELIC VIOLENCE CRIME OF VISUAL SHOCK」というヴィジュアル系の本質への回帰ともとれる。


  • 業-karma-
「死とはなんだ心臓が止まることか ビジュアル系とはなんだメイクをすることか 僕はそうは思わない」
「ビジュアル系ごっこするくらいなら否定される方がましだよ」
  • 拓也-takuya-
「チューニング下げればいいってわけじゃない」
「チューニングもレギュラーだしラウドじゃないし早弾きもできないし難しいことできないし音も古臭いって思うかもしれないけど この業界で誰よりもギターが好きな自信あるから 今日も明日もこれからも僕しか弾けないギター弾くよ」


2ndシングル「Solaris」-ソラリス-

前途したように、枠にとらわれないオルタナ精神が、ヴィジュアル系の本質でありアイデンティティーである。

だがその反面、様式美も存在する。

DIR EN GREYも、かつては先人達の様式美を継承したスタイルだった。

だが、エグゼクティブプロデューサーであるダイナマイトトミーは、DIR EN GREYがもつ"新しい何か"を見抜き「今は黒夢やLUNA SEAの影響が強いが、絶対にすごいバンドになる」と宣言していた。

その先見の明に狂いはなく、DIR EN GREYは日本代表する唯一無二のロックバンドへと成長を遂げた。


8月14日には蘭図の2ndシングル「Solaris」-ソラリス-がリリースされる。

これまでとは一線を画する新たなヴィジュアルイメージと楽曲。

これではっきりとしたはずだ、彼らが懐古主義の焼き直しではない事が。

蘭図がもつ"引き継ぐべき様式美"と"新しい何か"が、これからどんな景色を見せてくれるのか。

いちヴィジュアル系ファンとして楽しみで仕方ない。


TEXT:管理人

2019年7月13日


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