オールドスクールヴィジュアル名盤解放地帯 番外編「ディオーラ - 運命開化」
今回はクラシックな名盤をレビューする"オールドスクールヴィジュアル名盤解放地帯"の"番外編"として、2018年07月18日にリリースされた「ディオーラ - 運命開化」を紹介する。
DIAURAとは?
まず、"ディオーラ"には"DIAURA"という母体が存在する。DIAURAは、前身バンドであるヴァルナを経て2010年に結成されたヴィジュアル系バンド。バンド名にはDictatorial Aura(独裁のオーラ)という意味が込められている。いわゆる"ネオヴィジュアル系"以降のバンドではあるが、オールドスクールの美学を継承した楽曲とパフォーマンスで、往年のV系ファンからネオ以降のV系ファンまでを魅了している、10年代V系を代表するバンドなのだ。
ディオーラとは?
そのDIAURAが"ネオダークネス"をコンセプトにした、もうひとつの姿が"ディオーラ"である。ディオーラは、メンバーが「ヴィジュアル系の根底に流れる美学を忘れるな」と語るようにオールドスクールへの回帰がテーマとなっている。メンバー名もyo-ka→妖華、佳衣→禊-kei-、翔也→処飢夜、達也→龍耶-tatsuya-に変更し、オールドスクールヴィジュアル系へのこだわりと愛情を感じる。だが、単なる過去の焼き直しではない。そのサウンドは"ネオ meets オールドスクール"、まさしく"ネオダークネス"なのだ。
運命開化
ディオーラの1st Single「運命開化」は、タイトルトラックであるM1「運命開化」で幕をあげる。イントロから往年のV系ファン感涙必至のツインリードが炸裂。シンコペーションを多様した90年代黒服系チャカツタスタイルに妖華の色香漂うボーカルが絡み"ネオダークネス=ネオ meets オールドスクール"の世界へ誘われる。M2「葬獄」は、Madeth gray'llをモダンにしたような楽曲で、コテ系が隆盛を極めた90年代末期から00年代初頭の記憶が強烈にフラッシュバックする。「還リナサイ…在ルベキ場所ヘ…還リナサイ…永遠ノ孤独ヘ…」と歌われるパートに涙したコテ系ファンは多いのではないだろうか。ラストは、00年代初期コテ系の煽り曲を彷彿とさせるM3「ネメシス」。後半の語りやギターの怠い(良い意味での)流れがたまらない。ディオーラは、90年代だけではなく00年代初期V系の要素も強い。00年代初頭のV系シーンはアングラ/サブカル化、モダンヘヴィネス化、アイドル化の流れにあり、オールドスクールなコテ系バンドも変化を余儀なくされていた。オサレ系の台頭を受けコテオサなるサブジャンルも誕生したり、コテ系バンドにカタカナ表記のバンド名が急増した。"ディオーラ"という表記にもその時代への回帰が込められているのではないだろうか。また、前身バンドであるヴァルナ=原点への回帰という解釈もできる。(ディオーラのスタイルはヴァルナと近い。)
DIAURA/ディオーラと90年代V系の意外な共通点
PIERROTや黒夢に影響を受けたというyo-ka/妖華、LaputaをリスペクトしKouichiに通ずる素晴らしいギタープレイを聴かせる佳衣/禊-kei-。90年代V系がバックボーンにあるという彼らだが、ほかに意外な共通点がある。それは80年代の歌謡曲である。90年代V系の憂いと哀愁を帯びた刹那的なメロディーは、レジェンドたちが幼少期に聴いていた80年代歌謡曲の影響によるところが大きい。そして、両親の影響で80年代の歌謡曲に慣れ親しんでいたというyo-ka/妖華のメロディーセンスは、まさにそれを感じさせるものが多い。そう、両者は根底の部分で結びついていたのだ。
どうなる20年代ヴィジュアル系!?
2018年6月にリリースされた「The GazettE/NINTH」、2018年7月にリリースされた「lynch. /Xlll」、今回紹介した「ディオーラ/運命開化」。この三作品に共通するのはオールドスクールへの回帰、ネオ meets オールドスクール。ヴィジュアル系黄金時代と呼ばれる90年代から約20年が過ぎ、時代も価値観もV系シーンも大きく変わった。だが、現代に閉塞感を感じ異を唱える者も少なくはない。ヴィジュアル系は、その誕生から変化を繰り返してきた。しかし、その過程で置き忘れてきたものがあるのかもしれない。原点に立ち返り、また新たなヴィジュアル系を創造する時期にきたのかもしれない。10年代も残りわずか、今後の20年代ヴィジュアル系シーンがどのようになっていくか楽しみだ。
TEXT:管理人
2018年7月26日
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