1993年オールドスクールヴィジュアルベストアルバム10選

今から遡ること25年前、1993年はヴィジュアル系黄金時代前期と呼ばれた時代。

四半世紀前にあたる1993年のシーンは、どのような状況だったのか?

メジャーでは、世界進出を発表したX JAPANが、ART OF LIFEをリリースし、年末には東京ドーム公演"新型エックス第1弾 日本直撃カウントダウン X JAPAN RETURNS"を行っている。

また、Toshlに続き、hideとPATAもソロデビューを果たす。

LUNA SEAも1stシングル「BELIEVE」2ndアルバム「EDEN」をリリースし、本格的ブレイクの兆しをみせていた。

インディーズからはTOKYO YANKEES、Gargoyle、Gilles de Raisなどがメジャーへ進出。

黒夢、L'Arc-en-Cielは台風の目として、インディーズシーンをさらに守り立てていた。

ヴィジュアルショッカーたちの勢いはとどまる事を知らず、破竹の勢いでシーンが拡大していった年だ。

その1993年にリリースされた作品の中から、リリース25周年を記念して、筆者が独断と偏見で選出した名盤10選を紹介する。



X JAPAN ‎/ ART OF LIFE

X JAPANが1993年8月25日にリリースした、1曲29分にも及ぶ超大作。

1991年にリリースした「Jealousy」の完結編に位置する楽曲で、YOSHIKIの半生をモチーフにしている。

HIDEが「YOSHIKIのイニシアチブが強くなった作品」だと語っているように、非常にYOSHIKIの世界観が強い作品となっている。

メタルやクラシックなど、ジャンルという権威にすがる人間の常識を覆し、あらゆる垣根を破壊し続けたX JAPANが、その果てに辿り着いた一つの到達点。

同時に、"芸術"という高みに昇りつめたX JAPAN/YOSHIKI自身が"権威"となってしまった事を感じさせる作品でもある。

ロック界の頂点に君臨しながら、このような型破りな作品をリリースし、なおかつ産業的J-POPが支配するオリコン年間ランキングで28位を記録するという偉業を成し遂げた。

唯一無二という言葉は、この作品の為にある。真の歴史的名盤。



BUCK-TICK / darker than darkness -style93-

BUCK-TICKが1993年6月23日にリリースした、7枚目のスタジオアルバム。

隠しトラックとして、93トラック目に「D・T・D」が収録されている。

ロックスターであるが故の苦悩と葛藤、櫻井敦司が自己否定の美学で紡ぎ出す美しき退廃世界。

昭和アングラ的なエッセンスも見事に調和されている。

当時のインタビューでは、櫻井敦司のヴォーカリストとしての成長ぶりをメンバー全員が讃えていた。

サウンドスタイルは、前作にも増してアヴァンギャルドな要素が前面に出た作品となっていて、「ダーク」「アヴァンギャルド」「ポップ」という、三本柱を確立した作品だといえる。

人気絶頂の最中に、こういった前衛的な作品をリリースする、BUCK-TICKの気高い活動スタンスにも痺れる。

闇より暗い"暗黒の向こう側"を堪能する事ができる、国産ゴシックロックの最高傑作だ。



LUNA SEA / EDEN

LUNA SEAが1993年4月21日リリースした、3枚目のスタジオアルバム。

先行シングル「BELIEVE」に続きリリースされたメジャー2作目。

ちなみに「EDEN」というタイトルはベーシストJの発案である。

本作では、「LUNA SEA」「IMAGE」でみせたデカダンで攻撃的なサウンドから変化し、ポップで幻想的なサウンドスタイルを築いている。

浮遊感/透明感溢れるその楽曲群を、敢えてヴィジュアル系の様式に当てはめるならば"白系"といったところだが、プログレ的なくどさはない。

オープニングを飾る言わずと知れた名曲「JESUS」は、本作と相反するようなLAメタルチックなリフを軸に構成されているが、80年代臭さなど微塵も感じさせず、耽美的で白いEDEN色に染め上げているのだからLUNA SEAが秘めた計り知れぬポテンシャルに感服するしかないだろう。

RYUICHIは、MORRIEを彷彿とさせるロングヘアーを短くし、ヴォーカルスタイルもストレートに変化しはじめている。

どのアルバムにも言える事だが、本作も全曲が名曲、言うまでもなく歴史的名盤だ。



DIE IN CRIES / Classique Ave.の飛べない鳩

DIE IN CRIESが1993年12月1日にリリースした、セルフカバーアルバム。

 "THIS IS NOT A BEST SELECTION" と記載されており、BUCK-TICKの92年作「殺シノ調べ This is NOT Greatest Hits」と同じような位置付けにある作品と言える。

セルフカバーアルバムとされているが、「(with my song) to you」「Nocturne」はライブテイクとなっている。また、隠しトラックとしてM12に「JUDAS or JESUS?」が収録されている。

DIE IN CRIESは、D'ERLANGERのKYO、THE MAD CAPSULE MARKET'Sの室姫深、Every Little Thing 伊藤も在籍していたジャパメタバンドTHE ACEのTAKASHI、Zi:KillのYUKIHIROからなるオールスターバンド。

BOOWYが築いた王道日本語ロックスタイルを受け継ぎながら、ニューウェーブ的なアヴァンギャルド感覚を持ち合わせていて、バンドの在り方としてはDANGER CRUEの同胞であるL'Arc-en-Cielに通ずるところもある。

L'Arc-en-Cielのように、音楽ビジネスのメインストリームに昇りつめてもおかしくない、そんな計り知れぬポテンシャルを秘めたバンドだった。

ロックミュージシャンとしての美意識を失うことなく、普遍的な名曲を数多く残した90年代を代表するレジェンドである。



ZI:KILL / ROCKET

ZI:KILLが1993年6月9日にリリースした、ラストアルバム。

レコーディングはロンドンで行われた。

後期ZI:KILLの、ファンキーなホッピー神山色に難色を示すファンは多いが、最後のオリジナルアルバムにして新たな境地を切り開いた名盤。

本作では、ブリティッシュロック方面に舵を切り、よりストレートなロックンロールへ回帰している。

とはいえ、ヴォーカリストTUSKの、SIONを彷彿とさせる、社会からはみ出した不器用な人間の生き様を男臭く歌い上げるブルージーな詩世界は健在である。

過去には、L'Arc-en-Cielのyukihiro、D'ERLANGERのTetsuなどがドラマーとして在籍していたが、本作のドラマーは92年に加入したEBY。

シングルカットされた「CALLING」は、アニメ『バトルファイターズ餓狼伝説2』のテーマソングに起用された。

リリース後、2度目の日本武道館公演を成功させたが、惜しまれつつ解散。



Gilles de Rais / Gilles de Rais

Gilles de Raisが1993年6月18日にリリースした、メジャーデビューアルバム。

"妖美・華麗なゴシックサウンド"と標榜する1st「DAMNED PICTURES」では、ZOA/ASYLUMなどのトランス系バンドを彷彿とさせるスタイルをみせたGilles de Rais。

その後、エクスタシーレコードに移籍しリリースした伝説の名盤「殺意」では、盟友LUNA SEAが築いた黒服系王道チャカツタサウンドを踏襲しながらも、ヴォーカリストJOEのパンクスタイルと、ギタリストJACKのHR/HMギタリスト然としたスタイルが化学反応を起こし、Gilles de Rais独自のサウンドを確立している。

殺意マスク、殺意腕章、血糊包帯、80年代アンダーグラウンドシーンのパンクバンドのような危険な空気と王道黒服系スタイルが合わさったヴィジュアルは、「殺意」のサウンドをさらに助長し、強烈なインパクトを産み出している。

「殺意」は爆発的なセールスを記録し、勢いに乗ったGilles de Raisは、集大成的なアルバム「BECAUSE」をはさみ、メジャー進出する。

本作はLAでレコーディングされ、あのジョー・バレシを迎えて製作されている。

そういった事が要因となっているのか、「殺意」でみせた危うい香りは薄まり、LAらしい乾いた感触になっている。

基本的には「殺意」で確立したスタイルの延長線上にあるが、DEAD ENDを彷彿とさせるアプローチをみせていたり、LUNA SEAのPRECIOUS/WISH/STAY的な位置付けのをナンバーも収録されている。

また、ヴィジュアルも耽美的でエレガントなイメージを打ち出していて、ブレイクを意識しているのが伺える。

「殺意」の頃の彼らを求めるファンは決して少なくない。

しかし、このアルバムは、上述した「殺意」との対比などどうでもよくなるくらい、名曲揃いの名盤なのだ。

スターリンやウィラードをフェイバリットに挙げるJOEのパンキッシュなヴォーカル、テクニカルに弾き倒すJACKのギター、ソリッドかつ安定感のあるリズム隊、音楽性を変化させようともGilles de Raisのサウンドは問答無用でかっこいい。

隠れた名盤。これが"イマジネーションパンク"だ。



黒夢 / 亡骸を...

黒夢が1993年6月11日にリリースした、インディーズ期唯一のフルアルバム。

オールドスクールヴィジュアル名盤解放地帯「黒夢 - 亡骸を…」を読む



L'Arc-en-Ciel / DUNE

L'Arc-en-Cielが1993年4月10日ににリリースした、インディーズ期唯一のフルアルバム。

オールドスクールヴィジュアル名盤解放地帯「L'Arc-en-Ciel - DUNE」を読む



Amphibian / Doppelganger 

Amphibianが1993年5月1日にリリースした、唯一の単独作。

エクスタシーレコードと双璧をなした、DYNAMITE TOMMY率いるフリーウィルからのリリース。

関西ジャパメタの系譜として語られる事が多いのだが、レーベルメイトのBELLZLLEBや妖花と比べるとメタル指数はそこまで高くない。

とはいえ、古き良きジャパメタ臭さも感じ取る事ができる作品となっている。

また、ガスタンクやD'ERLANGERをフェイバリットにあげているように、SHELLAのヴォーカルはどこかBAKIに通ずるものがあり、演歌メタルと評された日本人好みのメロディーは、これぞ初期ヴィジュアル系といったスタイルを産み出している。

CIPHERチックでサディスティカルパンクをおもわせるフレーズが散りばめられた、KAZUKI/Ko-ichiのギターはシャープで表情豊か、縦横無尽に動き回るKATSUMIのベースとYAYOIのドラムもすばらしい。

わかりやすく言えば、D'ERLANGER+ガスタンク+ジャパメタといったところか。

当時の空気感を閉じ込めたジャケットアートもたまらない。

この作品以外では、デモテープとオムニバスしか音源を残していないのが残念だ。

今もなおオールドスクールマニアに愛され続ける秀作。



SPEED-iD / INNER DIMENSION

SPEED-iDが1993年9月21にリリースした、ファーストアルバム。

DYNAMITE TOMMY率いるフリーウィルからのリリースとなっている。

SPEED-iDは、現在もマニアからカルト的な支持を集めるバンド。

当時のラインナップは、中心人物であるex.THE OTHER SIDEの優朗とJ.P.HAL、ex.HISTERIAのIPPEI、ex.The HAREM Q/DIE-KUSSEのMAC。

そのサウンドは、前身バンドTHE OTHER SIDEでみせたトランス系バンドを彷彿とさせるスタイルを引き継ぎながらも、ドアーズなどのクラシックロックから、ゴス、サイケ、シューゲイザー、インダストリアル、クラブミュージックを包括した、究極のサイケデリックロックを確立している。

圧倒的なロックIQの高さとセンスが織りなす彼らの存在感は、当時シーンにはびこっていた有象無象のBUCK-TICK/D'ERLANGERフォロワーとは全く異質のものであった。

中世ヨーロッパをモチーフにした、退廃的/耽美的な世界観を表現するバンドが溢れる中、SPEED-iDは今現在おこっている退廃<殺人><セックス><ドラッグ>を表現しており、20世紀末のリアリティーをもったロックを提示している。

ヴォーカリスト優朗の哲学的/文学的な詩世界、イアン・アストバリー/アンドリュー・エルドリッチ/ウィラードのジュンあたりを彷彿とさせる佇まい、カリスマティックなオーラも魅力的だ。

同時発売した映像作品「INNER DIMENSION =MOVIES= 」も素晴らしい作品なのであわせてチェックしてほしい。

後にリリースされたリマスター版には、ボーナストラックとして「OCEAN」が収録されている。

COALTAR OF THE DEEPERS及び周辺バンドのファン、洋楽ファンにも聞いてほしい名作。

90年代末頃からはストレートなオールドスクールゴスへ回帰し、現在はゴスシーンの重鎮バンドとして君臨している。



1993年の日本は、末期ジュリアナブームやナタ・デ・ココブームがあったり、Jリーグが開幕しミサンガが大流行した年。

音楽シーンでは、ビーイング系のアーティストがチャートを占拠していた。

ヴィジュアル系アーティストたちは、以前にも増してインタストリアル/電子音楽に接近する動きをみせた年だった。

そういった時代背景も加味しながら、この年に産まれた名盤たちに耳を傾けると、よりいっそう味わい深くなるはずだ。


TEXT:管理人

2018年5月13日


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