オールドスクールヴィジュアル名盤解放地帯 #2「L'Arc-en-Ciel - DUNE」

クラシックな名盤をレビューするオールドスクールヴィジュアル名盤解放地帯。今回はL'Arc-en-Cielが1993年にデンジャークルーレコードからリリースしたファーストアルバム「DUNE」をレビューする。収録曲は、01:Shutting from the sky 02:Voice 03:Taste of love 04:Entichers 05:Floods of tears 06:Dune07:Be destined 08:追憶の情景 09:As if in a dream 10:失われた眺め(通常盤に収録) 11:Floods of tears (single version)(10th Anniversary Editionに収録) 12:夜想花(10th Anniversary Editionに収録) 13:予感(10th Anniversary Editionに収録)。アルバムタイトルである"DUNE"はフランス語で"砂丘"を意味する。


語り継ぐべき功績

「あのバンドはヴィジュアル系ではない」「いや、ヴィジュアル系だ」そういった論争が尽きることはない。認識の違いによる争いが起こることは、致し方ないことなのかもしれない。

──既存の枠にとらわれないオルタナ精神がヴィジュアル系の起源でありアイデンティティであるが、ヴィジュアル系がカルチャーとして定着していく中で、ある種の様式美が生まれていく。その矛盾こそが一辺倒にならない多種多様なヴィジュアル系観を作り出し、このシーンを複雑で面白いものにしている。

そもそもヴィジュアル系は音楽ジャンルではなく、80年代後半から巻き起こったムーブメントの総称である。そのムーブメントの渦中にあったバンドがヴィジュアル系バンドと呼ばれ、中心にいた彼らもまたそう呼ばれていた。L'Arc-en-Cielはヴィジュアル系シーンのみならず、日本の音楽シーンに大きな影響を与えた偉大なバンドである。ヴィジュアル系と呼ばれる様式美の範疇だけで語れるバンドではない。しかしながら、L'Arc-en-Cielはヴィジュアル系シーンをバックボーンに持ったバンドであり、多くの後続ヴィジュアル系バンドを生み出してきたバンドでもある。ヴィジュアル系シーンへもたらしたその功績は計り知れない。

本来であれば後世に語り継ぐべき重要なその歴史を、忖度で葬り去ってもいいのだろうか?


圧倒的完成度と新しい様式美の確立

L'Arc-en-Cielは、1991年にベーシストのtetsuyaを中心に大阪で結成される。同年の5月にファーストライヴを今はなき難波ロケッツで行なった。そのライブではファーストライヴにして、約130人の動員を記録。バンドに対する期待値の高さが伺える。1992年に全国進出を果たし、オムニバス参加、シングルCDリリースを経て、名門デンジャークルーに移籍した。1993年にhyde/ken/tetsuya/sakuraのラインナップが揃い、満を持して「DUNE」がリリースされた。

「DUNE」にはメンバーが公言するとおりDEAD ENDからの影響が色濃く反映されていて、そのDEAD ENDの作品の中でもとりわけ1989年にリリースされた「ZERO」からの影響が強く感じられる。DEAD END「ZERO」は当時のメタルファンからは問題作として扱われた作品だが、いわゆるヴィジュアル系ファンからは評価が高い。HR/HMを軸としたヘヴィなサウンドにニューウェイヴ的なアプローチが同居した前人未踏のスタイルをアバンギャルドかつポップに築き上げ、後のヴィジュアル系バンドに多大な影響を与えた作品。

当時、後期DEAD ENDの影響下にある幻想的な世界観/浮遊感/透明感/スケール感に特化した白系の先駆けとなるようなバンドは彼らの他にも存在したが、L'Arc-en-Cielの完成度は群を抜いていた。


PSYCHOSONIC SHAKE

デンジャークルーに移籍した頃あたりからだろうか。L'Arc-en-Cielは、黒服系バンドの一群に埋もれてしまいそうな当初のヴィジュアルイメージから脱却しはじめる。純白の衣装を纏ったhydeの汚れなき少女を思わせるルックスや、後の音楽性を予感させるようなフォークロアチックなスタイル。そういったヴィジュアルイメージは「DUNE」が描く世界観を助長し、黒服を纏いダークな世界観を打ち出すバンドが主流であったシーンの中でL'Arc-en-Cielの存在を確固たるものにした。

サウンド面においても、DEAD ENDをはじめとした先人達の影響は随所に感じられるものの、ただの模倣では終わっていない。ルーツであるUKロックのテイストや、トランス系バンドに通ずるような民族音楽、プログレ的なアプローチを盛り込んだサウンドに、風景を切り取ったような異国情緒を漂わせる詩世界を歌謡曲的なメロディーにのせ情念たっぷりに歌い上げるナルシスティックなヴォーカルが合わさり、独自の幻想世界を作り出す。

メンバー各々のスキルも高く、マニアックになってしまいそうなサウンドをキャッチーに仕上げるセンスは流石としか言いようがない。さらにデンジャークルーのプロデュース力も合わさり、当時のインディーズシーンでは類を見ない完成度の高さを見せつけている。

この初期L'Arc-en-Cielが掲げた"PSYCHOSONIC SHAKE"といわれるヴィジュアルイメージとサウンドスタイルは、後続のヴィジュアル系バンドに大きな影響を与え"白系"という様式美を生み出す。

──誤解を恐れずに言おう、「DUNE」はヴィジュアル系史における紛うことなき名盤であると。

TEXT:管理人

2018年3月26日


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