オールドスクールヴィジュアル名盤解放地帯 #9「LUNA SEA - LUNA SEA」

クラシックな名盤をレビューしていく連載コラム「オールドスクールヴィジュアル名盤解放地帯」。 第9回目となる今回は、LUNA SEAが1991年にリリースしたアルバム「LUNA SEA」をレビューする。収録曲は、M01「FATE」 M02「TIME IS DEAD」 M03「SANDY TIME」 M04「BRANCH ROAD」M05「SHADE」 M06「BLUE TRANSPARENCY 限りなく透明に近いブルー」 M07「THE SLAIN」 M08「CHESS」 M09「MOON」 M10「PRECIOUS...」の全10曲。かつてYOSHIKIが主催していたエクスタシーレコードからリリースされた。LUNA SEAの1stアルバムであり、インディーズ時代に残した唯一のアルバム作品である。2011年には全曲を再録音したセルフカバーアルバムがリリースされている。

X JAPANと共に90年代ヴィジュアル系ムーブメントを牽引し、日本を代表するロックバンドへ登り詰めたLUNA SEA。レジェンド中のレジェンドである彼らについてはもはや説明不要だろう。では彼らが本作をリリースした1991年のシーンはどのような状況だったのか?少し振り返ってみよう。

メジャーシーンではXとBUCK-TICKがロックシーンの頂点を極め、その人気は社会現象と呼べる規模にまで達していた。インディーズシーンからはネクストブレイクを狙いAION/ZI:KILL/STRAWBERRY FIELDS/Luis-Mary/LADIES ROOMなどがメジャー進出を果たす。また、エクスタシーレコード周辺バンドが一堂に会する伝説的イベント"エクスタシーサミット"が日本武道館で開催されるなど所謂ヴィジュアル系バンドの盛り上がりは最高潮を迎えようとしていた。

一方LUNA SEAは急激に動員を伸ばし、目黒鹿鳴館と目黒ライブステーションでのワンマン公演、Gilles de Rais/Sighs of Love Potion/LUNA SEAの3バンドにて行われた"NUCLEAR FUSION TOUR"を大成功に収めていた。まさに飛ぶ鳥を落とす勢い、人気急上昇の最中にあったわけである。後のSUGIZOの発言によると当時存在していたほぼ全てのメジャーレコード会社からオファーを受けていたという。

本作は、そういった爆発寸前の勢いがパッケージされた初期衝動の塊のような一枚となっている。

当時のインタビューにおいて、SUGIZOはエクスプロイテッド/カオスUK/ディスチャージ/クラスなどのUKハードコア、Jはガーゼ/リップクリームなどのジャパコア(ジャパニーズハードコア)からの影響を公言している。他のメンバーもそういった類の発言をしており、初期LUNA SEAのスタイルの中で"ハードコアパンク"が大きなウェイトを占める重要な要素であった事は間違いないだろう。

そしてもう一つ本作を語る上で重要なポイントが"ニューウェイヴ"からの影響である。こちらもインタビューにおいてメンバーの共通項としてあげられている。当サイトでもよく使うポジティブパンクなんて言葉はもうとうの昔に死語で、ニューウェイヴと形容されるバンド群の中で暗黒寄りのバンドを総称してダークウェイヴなどと呼ぶらしいが、初期LUNA SEAのスタイルをそれに則って表現するならば"ダークウェイヴ+ハードコアパンク"といったところであろうか。SUGIZOが「そこに歌謡曲的なポップセンスを融合させた」というように、本作は攻撃的かつアヴァンギャルドでありながらキャッチーさも併せ持った作品となっている。

SUGIZO作曲のM01「FATE」は、これを体現するようにショート&ファストなナンバー。一聴するとキャッチーでパンキッシュな楽曲だが、ギターはジャジーな響きを匂わせていたり、ツーバスが炸裂していたりとかなりカオティック。RYUICHIの「今は、狂って痛い」という独特なワードセンスにも耳を奪われる。

J作曲のM02「TIME IS DEAD」 は、今もライブでの定番曲としてプレイされているお馴染みの楽曲。正直な話インタビューを読むまで、この楽曲にソウルやファンクの要素が取り入れられていた事を全く気づけませんでした。LUNA SEA恐るべし。

M03「SANDY TIME」 は、INORAN作曲。INORANの美しいアルペジオとSUGIZOのアヴァンギャルドなギターの対比が美し過ぎる。プログレッシブなライブバージョンも最高。

M04「BRANCH ROAD」は、SUGIZO作曲。エロティックかつカオティックなナンバーだが、こちらもM02「TIME IS DEAD」と同じくソウルやファンクからの影響が根幹になっているという。

J作曲のM05「SHADE」 は、これぞ初期LUNA SEA!というようなデカダンハードコアパンク。途中ブレイクを挟み後の「Providence」に繋がるようなワルツ的な展開を見せたりとLUNA SEAという一筋縄ではいかない存在を象徴するような楽曲。ヒステリックなギターソロも死ぬほどかっこいい。SUGIZOが「キングクリムゾンやピンクフロイドあたりのプログレの影響もある」というように、この曲に限らず本作にはプログレテイストも取り込まれている。

M06「BLUE TRANSPARENCY 限りなく透明に近いブルー」 は、INORAN作曲。CIPHER (D'ERLANGER)を師と仰ぐINORANによるナンバーということで、どこかサディスティカルパンキッシュ。情念的に歌い上げるクリーンヴォイスとシャウトまじりに捲し立てるディストーションヴォイスを対比させていくBAKI(ガスタンク)やMORRIEのスタイルを受け継いだRYUICHIのヴォーカルも最高にキレてる。

デカダンかつドゥーミーなJ作曲のM07「THE SLAIN」 からストーリー的に繋がっていくのは、SUGIZO作曲のM08「CHESS」 。M05「SHADE」に続くデカダンハードコアパンクで、イントロのベースでもう失神レベルのかっこよさ。ヒステリックなギターと耽美なアルペジオが織りなすグラデーションが狂うほど美しい。全SLAVEのみなさんからお叱りを受けてしまうかもしれないが、個人的にLUNA SEAで一番好きな曲です。

M09「MOON」 は、SUGIZO作曲。ライブでの映え方が異常過ぎる幻想的なナンバー。LUNA SEAの代名詞と言える独特なディレイ奏法がこの頃から確立されている。個人的にはDEAD ENDやU2からインスパイアされたプレイスタイルだと思っていたが、最近のSUGIZOの発言によるとYMOから着想を得たものだという。メジャーデビューアルバム「IMAGE」でビルドアップされる。

ラストを飾るM10「PRECIOUS...」は、J作曲。LUNA SEA流のデカダンビートロックといった感じの楽曲で、メジャー感漂うキラーチューン。どこかBOØWYのDreamin'を思わせる。当時のインタビューにてBOØWYをはじめとしたビート系からの影響を示唆するような発言はあったが、明言されたものは目にした事はない。それ故か、LUNA SEAとビートロックの関係性はあまり語られてこなかったように思う。しかしながら、彼らの楽曲にはビートロック・マナーを感じさせるアプローチがふんだんに盛り込まれており、その血筋を引き継いでいるのは紛れもない事実であろう。

先人たちの遺伝子を感じさせながらも、LUNA SEAでしか成し得ないオリジナリティーを獲得した本作品。これをセルフプロデュースで完成させたのが、まだ二十歳そこそこの少年たちだというのだから驚愕である。

音楽にパクりはない──。ヴォーカリストRYUICHIはそう語る。これはジャンルを問わず創作活動をした事がある人ならば共感するものがあるのではないだろうか。誤解を招きそうなのでカバーを入れておく。何食わぬ顔で他人の功績を掠め取り、自分の手柄にする悪意をもったパクりというのは存在する。だが創作において、ゼロから物を生み出す事が出来る人間など存在しない。誰もが何かからインスピレーションを与えられ、表現への衝動を覚える。「すべての創造は模倣から始まる」とはよく言ったものだ。現に本作からもDEAD END/BUCK-TICK/ZI:KILL/D'ERLANGERなどの影響が見て取れる。しかし歴史を変えてしまうような人間というのはその模倣を独創に変える。それを体現した革命的作品がこの「LUNA SEA」である。

ベーシストのJは自身のルーツであるパンクムーブメントに対して「いまだにあれを超える衝撃には出会えない」と語っていたが、それを超えるものを目指し作られたのがLUNA SEAというバンドだったのではないだろうか。やがて彼らはそのパンクムーブメントにも匹敵するヴィジュアル系ムーブメントを巻き起こしていく。流行の移り変わりが早い日本の音楽シーンにおいて、約10年にも渡り隆盛を極め続けたこのムーブメントを先導したのは、間違いなくLUNA SEAであろう。

余計な先入観が邪魔をするバンドである事は筆者も重々承知している。だがそれを無理矢理取っ払ってでも聴くべき価値がある歴史的な作品だ。ヴィジュアル系だろ?という色眼鏡をかけた全ての人に聴いて欲しい。No Synthesizer。

TEXT:管理人

2020.11.29


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